兼松株式会社Kanematsu Corporation.
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おでん玉子のイノベーション“もの売り”ではない、“こと売り”商売とは

Project of KANEMATSU02

堀 大介 食品第二部 調理食品課
2012年入社/経営学部市場経営学科卒
大学時代は、アメリカンフットボールの名選手として活躍していたというだけあり、筋肉質でしなやかな身のこなしが目に付くが、精神面もかなり鍛えられている印象を受ける。それでも、具材コンペが終わる頃には玉子はしばらく見たくなくなるらしい。

2010年夏、コンビニおでん業界に衝撃が走った。商社である兼松がコンペの末に業界最大手メーカーをひっくり返したというのだ。それまでコンビニおでん業界は“寄り合い”の存在によって、新規参入は無理だといわれてきた。しかし兼松は、その常識を覆したのである。決め手となったのは、商社の枠に収まらない兼松ならではのアプローチだった。

兼松に“常識”は通用しない。

黄身と白身からなる〝玉子〟――この単純であるが、おでんの中では常に人気ランキング上位を誇る食材は、コンビニ商材としては通年アイテムであり、安定した数量が見込める商圏だ。ともすれば10億円超のビジネスに繋がる。この”玉子”をコンビニエンスストアに提供するとき、どれだけの可能性や驚きやおいしさを示すことができるか。堀大介たち、食品第二部調理食品課のメンバーは、常にその課題に向き合い続けている。

調理食品課は兼松において一風変わった特色を持つ部署だ。社外にテストキッチンを有し、さまざまな食品を調理。目的に向けた検証を通じ、得られた加工段階での開発ノウハウを食品メーカーなどに提案している。主な顧客をコンビニエンスストアやスーパーマーケットとし、赤飯やおでん具材(玉子、大根など)から調味料に至るまで、数多くの商材を扱っている。例えば、赤飯おにぎり分野では、もち米に関する機能性・製法特許を取得し、ここ3年間で全コンビニチェーンで採用されるまでとなった。最近ではアミューズメントパークや外食産業にもアプローチをしている。

「自分たちがすべきことは何か。そのヒントは、顧客の何気ないひと言や、彼ら自身も気付いていない潜在的なニーズの中に必ず眠っています。2010年、コンペの末に当社が大手コンビニチェーンへ初めておでん玉子を供給することが決まったときが、まさにそうでした。顧客が『常識』として半ば諦めていたような課題に、兼松は真正面から向き合ったのです」

当時、顧客であるコンビニのバイヤーを悩ませていた問題は2点あった。『賞味期限の短さ』と『煮込むほどに固くなってしまう白身』である。客足に応じて煮込む時間に差が出てしまうコンビニおでんの玉子は、最大で2週間しかもたず、毎日入荷するのが当たり前。どうしても物流ロスは発生してしまう。これが当時の「常識」だった。

2009年夏、コンビニのバイヤーとの会話から2つの課題を察知したプロジェクトメンバーは、さっそく協力してもらえるメーカーを探し、共に商品開発にとりかかった。その日から、出社すればテストキッチンに通うといった商社パーソンらしからぬ日々が始まった。ところが、双方の条件を満たす玉子を開発することがいかに難しいかは、すぐに思い知らされることとなる—。

なんとか賞味期限を数十日延ばした玉子ができたのに、煮込んで食べてみると白身がぼそぼそと口に残り、とてもおいしいとはいえない。白身の軟らかさを保とうとすると、賞味期限は短くなってしまう。こちらを立てればあちらが立たずで、失敗に失敗を重ねる日々が続いた。なかなか糸口が見えない苛立ちから、「どちらかを諦めるべきか……」との考えが何度も頭をよぎったという。しかしその都度、「顕在化している顧客ニーズを前に、目をつぶるわけにはいかない」と、開発を続けたのである。

半年間という長い試行錯誤を経てついに誕生したのが「ロングライフ玉子」だ。賞味期限は従来品の4倍以上の60日、長時間煮込んでも〝ぷるん〟とした白身の食感が失われない画期的な商品だ。この「常識はずれ」の玉子は、業界に衝撃をもたらすこととなった。

コンビニおでんが実は、参入の難しいカテゴリーであることは後に知ることとなる。というのも、おでん業界では、具材ごとに得意とする食品メーカーが集まり「おでん部会」なる寄り合いを組織して大手コンビニと強力なコネクションを築いていたのだ。このように新規参入を阻んできた業界であったため、コンビニ市場未経験の兼松がコンペの末に勝利を奪取したニュースは当然、業界内で話題をさらった。長年新規参入を拒んできたおでん具材業界に風穴を開ける快挙であった。

しかし、“業界初”はすぐに追い越され、陳腐化してしまうのが商売の常。
この勝利は、プロジェクトメンバーにとってその後も続く長い戦いの始まりとなる。

開発に関わることが兼松の強さ

コンビニおでんの具材をどの企業から仕入れるかは、毎年のコンペによって決定されている。兼松が快挙を成し遂げて以来、このコンペは激化する一方だ。しかも、前年採用されたことがアドバンテージになるような甘い世界ではない。
「毎年、ゼロベースでコンペはスタートします。強みにあぐらをかいていれば、翌年採用されるとは限らない厳しい世界なのです。だから、採用のポイントとなった2つの特長はそのままに、新たな価値を付加し続けなければなりませんでした」

一概に付加価値と言ってもその形は色々ある。

コンペA
初年度に取り組んだテーマは『モンドセレクション 金賞』の獲得であった。ご存知の通り、モンドセレクションはベルギーに本部を置く国際的な品評機関で、世界各地にある優れた市販商品の評価、品質向上を目的としている。受賞すれば5年間は受賞した証として商品パッケージなどにラベルを貼ることが出来るものだが、これまで社内でも実例が無かったことに、その手続きには困難を要した。おでん玉子の配分表やレシピの英語訳から、通関・税関手続きに至るまで、あらゆる問題を一つずつクリアーしながら最終的に応募までこぎつけた結果は、「Oden Egg Silver Award」。残念ながら、金賞とまではいかなかったが、食のノーベル賞ともいわれる国際評価で「銀賞」を勝ち得た付加価値は大変大きかったと言う。

コンペB
次に挑んだテーマは、『おいしそうな見た目』と『旨みの濃さ』の実現だった。ここでも大事にしたのは潜在的な顧客のニーズである。ヒントは、「黄身の色はより黄色く、白身はより白い玉子のほうがおいしそうに見える」という言葉から得た。「旨みの濃さ」を加えたのは、見た目のおいしさに負けない味が必要だと考えたからだ。

「目をつけたのは特殊卵という玉子です。多少割高な価格設定がされている玉子のことで、普通卵より旨みも黄身の色も濃い商品が数多く販売されています」
ただし、問題もあった。特殊卵には赤い殻の玉子(赤玉)が多かったのだ。赤玉の特徴は、ゆでたときに白身部分にミートスポットという肉斑が入りやすい。根本的におでん玉子として適さない「常識」がここにもあった。

「ここでテーマを変更する道もあったのかもしれません。でも、私たちは、テーマではなく、発想を変えることにしました。『無いなら、つくればいい』と」

卵の黄身の色は、飼料によって変えられる。ならば、旨みはそのままに、殻の色だけを白くした特殊卵がつくれないか。堀たちはパートナー(食品メーカー)と一緒になって汗をかいた。加えて、安定供給のための物流体制構築にも着手した。そして、コンペまでの限られた時間の中、双方の課題解決を果たしたことで、来る次年度向けのコンペにも見事打ち勝つことが出来た。堀らが手がけた新しい商品は「特殊卵を使ったおいしいおでん玉子」の謳い文句で、再び華々しいデビューを飾ることになったのだ。

「顧客の求めることを満たすには、毎年新しいことに挑戦し、知らない世界に飛び込んでいかなければなりません。また、扱う商品が食品であるがゆえに、味覚や視覚、嗅覚といった曖昧なものを相手にするので、自らの舌や目、鼻で試作品を何度も確かめる必要があります。コンペが近づき、週に3回、1日20個ほどのおでん玉子を食べていた頃は、さすがに玉子は見たくないと思うこともありました。でも、その必要性を疑ったことはありません。なぜなら、これこそが我々のやり方だからです」

兼松は商社でありながら、その働き方やビジネスモデルに決まったしがらみは存在しない。時に商品開発担当の知恵を借りつつ、営業自らが手を、足を動かし、商品を試作するなどのメーカーのような立ち回りをする。その分、顧客に寄り添うことができるだけでなく、自ずと提案にも説得力が備わる。こうして一人ひとりが幅広く商売を担当し、お客様の“お役立ち”を突き詰めて事業創造を図っていく―。それが兼松の強さだというのだ。

「当社は、営業が仕入れから販売まで――川上から川下まで一貫して担当するだけでなく、開発にも深く関わることで、顧客ニーズを引き出し、それに応える精度を高めています。つまり、ただ右から左へモノを流すだけではなく、常にメーカーポジションに立ち、お客様の悩みを解決することに主眼をおいて提案しています。商売というと『モノ』の売買をイメージしてしまいがちですが、兼松では主として『コト』(解決策、サービス、ノウハウ)を売り、マーケットを創造、副次的に『モノ』を売ることを目指しています。そこに苦労がありますが、それ以上のやりがいの源泉にもなっています」

このスタンスが、2010年以来、継続して玉子を採用されている実績や、モンドセレクション銀賞を4年連続受賞している結果につながっているのだろう。だが、堀たちは現状に満足してはいない。前年より少しでも良いものを求めて、顧客の課題に今も向き合い、挑み続けている。

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